-  Siberia -


          

[クラスノヤルスク、再び]

  距離にして600キロ、列車の待時間も含めて延べ19時間の列車旅行は終り、僕はクラスノヤルスクに戻ってきた。午前の太陽が駅舎の屋根を照らし、懐かしいクラスノへ帰ってきてほころんだ僕のこころをさらに温かくした。

  バレーラ(例の英語ペラペラ少年)に電話を入れると、早速近くのバス停まで迎えにきてくれることになった。

 そこに行くためにはバスに乗らなければならないのだが、そのバスを探してくれたお姉さん、運転手に行き先を確認してくれたオバサン、そして重い自転車をバスに積み入れてくれたオジサン、みんなの温かいこころに触れ、ああこれもロシアだと実感した。

 バレーラの実家に着くと、母親のラリーサさんはバレーラの「初等教育卒業記念パーティー」の準備に忙しく立ち回っていた。そんな中でも僕に気を配っていただき、お風呂だ、ご飯だと準備をしてくれた。列車で酷い目にあった心と身体が溶かされるような気分だった。

 早速タクシーでお久し振りのスポーツショップへ。が、マウンテンバイク用のリムなし。新車からの借用ダメ。で、悩んでいたら(悩んでもどうしようもないのに…)、店長の髭オジサン、

 「とにかくチャイ飲め」

 と僕を椅子に座らせた。

 (イルクーツクか)

 悲痛な顔をして考え込んでいたら、30分後位だったろうか、店の「ビッグボス」(つまり、オーナーだろう)がやってきて、店のお兄さんを指さし、

 「こいつのバイクの後輪を取り外して、お前のバイクに取り付ける。400ルーブルだが、それでオーケーか?」

 オーケーも何もあったものじゃない。ここで修理をしないことには始まらないのだ。おまけに店のお兄さんも、何ひとつ問題顔をしないで、優しく笑っている。値段は少し高いけど、こんな有難い話はない。

 さらにはハブは自分のものと全く同じ、リムはリッチーのだし、ギアも僕のものを着けなおしてくれた。これら全ての工賃は無償。本当にスパシーバ、みなさん!

 バレーラが電話で確認してくれたところでは、今夜、ケメロボ行の列車があるとのことだったが、いざ駅に着き切符売場に行ったところ、満員だから二日待てとのこと。冗談じゃない、と困った顔をしていると、タイガ行の列車ならあるから、それでタイガまで行き、そこで乗り換えなさいとのこと。ま、これは来た時と同じルートだから、それはそれでいいのだけれども、問題はタイガでの接続がどうかということ。それも、悩んだところで仕方がない。もっと問題なのは、この列車が明朝の五時に出発するということだ。

 マリエッタのところに行こう。あの人たちに会いたい。

 玄関の扉を開けたマリエッタは、さすがに驚いていた。それでも、いつものあの笑顔で喜びの顔を作ってくれた。マリエッタの準備してくれた軽食を食べながら、二人で話していると、自分の家に戻った気がしてホッとした。

 明朝三時半、静かに出発しようとすると、スタニトラが起きてきて、荷物を一緒に運んでくれた。

 「シスリーバ(頑張れ)!」

 いつまでも素敵な人たちだった。スタニトラファミリーがいなければ、僕は一体どうなっていたことだろう。


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