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「三月に初めてアイルランドを訪れ、あなたの国に惚れてしまった。ギネスのことだけじゃない。人間、そのやさしさ、笑顔。ゆったりとした、大らかな生きかた。日本という国、そしてその一部分である自分とのギャップ、距離が途方もなくあるように感じる。このふたつの国のあいだにユーラシア大陸が横たわっている。ユーラシアを越え、自転車で、自分の力だけでアイルランドまでゆく。アイルランドと日本、自分自身。この間には何があるのか、その距離、ギャップとは何なのか。それをペダリングしながら見つけたい。その距離を、キック・ダウンしたい」
黙ってダブリンの夜景を眺めながら話を聞いていたジーン。話が終りこちらに向きなおると、その目には涙がにじんでみえる。
「素晴らしい。いい話をきいた。ありがとう、ヤス。絶対にやれよ。きっとだぞ」
1994年クリスマスの夜。遍歴は、ジョイス塔からはじまった。僕はペダリング・ブルームになった。
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